こんにちは！さんぽくんです。

この連載コラムでは、長野県のエリアごとに、お酒の魅力と酒屋さんの楽しみ方などを酒屋さんにインタビューする形式でご紹介します！
エリアごとのお酒の歴史、観光のヒントなんかも知れちゃいます。

このコラムを読めば、酒屋さんによく人も、行ったことがない人も酒屋さんに行きたくなること間違いなしです！

今回のコラムは東信（上田）エリア「地酒屋宮島」の宮島さんにインタビューの3回目です。

長野県の地酒に深い感銘 独自のコンセプトに舵を切る

――「地酒屋宮島」は今年で創業100年と聞きました。歴史などを教えてください。

1923年、ここから直線距離で1kmほど離れた場所で曽祖父が創業しました。当時は上田の岡崎酒造さんの支店として酒を売る代理店。祖父に代替わりして「宮島商店」と屋号に変えてよろず酒屋になっていきました。さらに父の代で生鮮食品も扱うミニスーパーのようなスタイルに変わって、1985年に今の場所に移転しました。

　今の店舗がある旧真田町の国道144号線はもともと、電車が通っていたんです。昔は林業が盛んで、上田駅から真田駅まで職人さんを運んだり、貨物で木材を送ったり。それが廃線になってバイパスができた数年後に移転しました。当時はコンビニスタイル。ナショナルブランドのビールや日本酒、雑誌や生活雑貨も扱っていました。

　その中で1991年に父親が他界してしまいます。私は大学3年生でしたけど、就活せず戻って継ぐことにしました。男4人兄弟の長男なので、「お前が跡継ぎだ」と何十年も言われているとそうなるんでしょう（笑）。反発した時期もあったけど、いざ父親が亡くなると肚は決まっていました。

そのころはちょうど、酒の価格破壊が始まっていた時期。従来うちの商圏は菅平高原もあって、夏はラグビー、冬はスキーのお客さんが年間200万人くらい訪れていました。そこに瓶ビールをトラックで運んで納める体力勝負をしていたのですが、価格競争で売れなくなることを見越すと死活問題。経営的にはまだ猶予はありましたが、「このままでは厳しい、何か個性を出さないと」と思うようになりました。それが1995年ごろです。

――そこから、長野県の酒だけを扱うように舵を切ったんですね。

南信地方の酒蔵が造っている、ある大吟醸を飲んだのがきっかけでした。あまりの美味しさに衝撃を受けて、その感動がもう忘れられなかったんです。「きき酒師」という資格を取って、取引させてもらおうとアプローチしましたが、「信頼関係がある酒屋じゃないと出せない」と門前払い。酒蔵さんと信頼関係を作って、消費者にきちんとしたコンディションで届ける。そうした「見えない流通」に気を付けないといけないと思って、まず酒販店を回って色々と教えてもらいました。

皆さんのものすごい熱量に圧倒されましたが、扱うのは全国のお酒。同じ土俵に立ってもまた価格競争に晒されるのではないか…と思い、「長野の酒だけを扱う」と覚悟を決めました。でも実績も信用もなくて門前払いされるので、まずは最初に衝撃を受けた酒蔵さんと特約を結んで大事に売るところからスタート。そこから派生して、地元から足元を固めて特約の蔵元さんを広げていきました。今は県内80蔵のうち48蔵が直接取引できる特約蔵になっています。

――立地は先代から引き継いだものですが、店づくりなどで意識していることはありますか？

　お酒はどんなに良い環境で保存しても、人間と同じで時間経過だけは防げない。歳は取るんです。それをどれだけ良いコンディションで届けられるか。紫外線と温度変化が大敵なので、店内は常に室温23℃の湿度55％、清酒の冷蔵設備は3℃で管理しています。あとは陳列も県内4地区ごとに南信→中信→東信→北信と並べています。

　立地としては、上田市街地から菅平高原、北軽井沢、群馬県草津町に抜ける街道沿い。ただ、そこに目的がない人からすると不便極まりないものがあります。上田駅から車で20分、夜になると真っ暗。それでも最近は新幹線で上田まで来て、1時間に1本くらいしかないバスに乗って来られるお客さんも増えています。ただ、問い合わせを受けた際にお伝えするのは「車で20分」ではなく「徒歩で3時間半」。駅から遠くて、薄暗くて怪しいお店――というコンセプトで売り出しています（笑）。

インタビューさせていただいた酒屋さんは共通して、
造り手、地域、お客さん、全ての繋がりを大切に守ってらっしゃることが印象的です。
長く愛される大事な要素であり、他の酒屋さんにも言えることなのだろうな…
とさんぽくんは想いを馳せてしまいました。

【東信エリア④】へ続きます！